2008年10月13日 (月)

気になる2つのミスマッチ

最近の金融危機を受け多くの方が解説を加えられています。個人的にはエクイティ・ホルダーのダメージは致し方ないと思いますが、その影響がデット・ホルダーまで及ぶのは避けるべきだったのではないかと思います。詳細はウォールストリート日記さんが上手くまとめられているので、そちらを参考にして頂ければと思います。

ところで最近気になっているのが2つのミスマッチ。1つはファンド・オブ・ヘッジファンズとその投資先ヘッジファンドの間に生じている解約条件のミスマッチ。もう1つは、CDSの損益計上ミスマッチです。

通常ファンド・オブ・ヘッジファンズの解約条件は多少の幅はあれ、1年間のロックアップ、四半期解約、60日~90日前の事前通知です。また投資先ヘッジファンドの解約条件は1年間のロックアップ、月次~四半期解約、30日~90日前の事前通知です。ファンド・オブ・ヘッジファンズはファンドにもよりますが20~60程度のヘッジファンドに投資しています(運用会社や戦略コンセプトにより大きく異なります)。直近5年間でヘッジファンド業界へ多くの資金が流入したため、運用会社によっては自分達の設定するファンド・オブ・ヘッジファンズの解約条件と投資先ヘッジファンドの解約条件が合わないものにまで投資しているケースが見受けられます。

どういうことかというと、ファンド・オブ・ファンズの解約が増えると、運用会社は解約代金を用意するために投資先ファンドを解約しにいかなくてはなりません。しかし、投資先ファンドの現金回収と自分達の設定するファンド・オブ・ファンズの資金化スケジュールが解約条件の観点からマッチしなくなっているケースがあるのです。

ここ5年でヘッジファンド業界は急速に成長したため、ずっと資金流入の状態でした。そのため、多少の解約があったとしても投資家への支払いに困ったことはありませんでした。しかし、この度は多くの投資家が解約に走っているため、12月末の解約ではこの解約条件のミスマッチが浮き彫りになると思います。そうならないために今後いくつかのヘッジファンドは換金売りに走らざるを得ず、そのことが更なるパフォーマンスの悪化へと繋がりそうです。今までよく耐えていたヘッジファンドの中にも苦しくなってくるところが出てくると思います。まさに悪循環です。

もう1つのCDSの損益計上のミスマッチですが、これはAIG等CDSの売り手が犯した大きな間違いです。というかそういった計上を認めていた各国会計制度の間違いでしょうか。CDSの売り手は売った段階でリスクプレミアム(保険料)を買い手からもらいます。しかし、CDSの売り手は、リスクを引き受けているので同期間に貸倒引当金を積む必要があったのですが、実際には破綻して損失が出たあと始めてバランスシートにその損失を計上していました。

これにより、サブプライム問題が出てくるまではCDS市場は堅調に推移し、また取引も急拡大していたため、CDS取引の売り手は、その取引をすればするほどリスクプレミアム分見掛け上の収益が出ていたことになります。利益を計上する期間と損失を計上する期間のミスマッチが起こっていたのです。これについては収益計上のミスマッチをなくすべく当局が共同でデリバティブ取引に関する統一基準を作るべきだと思います。

ヘッジファンドのパフォーマンスは年内は厳しいと思います。業界に身を置くものとしては早く収束して欲しいのですが・・・。

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2008年9月22日 (月)

今月のヘッジファンド

日曜日の日経ヴェリタスも数面を割いてCDSの特集を組んでいましたが、この度のイベントでCDSという言葉がすっかり市民権を得たような気がします。もともとリスクヘッジというpassiveな目的のために作られたCDSがactiveに取引され、皆が知らないうちに細部にまでリスクが広がっていたというのは皮肉なものです。

さて、今月のヘッジファンドですが過去最悪のパフォーマンスではないでしょうか。直近2日間で株式市場が反発しているため、ロング&ショート戦略を中心に若干戻しているかもしれませんが、合併スプレッドは拡大し、CBのマーケットは薄くあまり取引が成立していないようです。HFRX指数を見ると今月18日までで既に4.9%のマイナスです。ある一部のヘッジファンドを除いて、リーマンやAIGへのエクスポージャーそのものが大きくパフォーマンスに影響を及ぼしているところは少ないのではないでしょうか。むしろ、上記の通り、この度の混乱により合併スプレッドが拡大したり、CB市場の出来高が急激に減ったりとしていることの方がインパクトが大きいと思います。CB Arb戦略は統計的手法を用いて売買するため、多くのヘッジファンドのポジション・ベクトルが同じになります。そのため、我慢比べが暫く続きそうです。2004年みたいにならなければ良いのですが・・・。

唯一プラスの成績を残しているのはマクロ・CTA戦略ではないでしょうか。株式ショート、商品ショート、ドルショートがプラス寄与しているようですが、市場が乱高下しているのでこれも月末が来るまで分かりません。いずれにしても今月もヘッジファンドにとって苦しい状況が続きそうです。

また、今後の注目点としては中小のヘッジファンドですね。この度の混乱でプライム・ブローカーの数が一気に減ってしまいました。GS、モルスタといった大手が手数料を上げれば中小のヘッジファンドにとっては深刻な問題となります。淘汰が進むか注目したいです。しかしながら、淘汰が進み過当競争がなくなれば、アービトラージ戦略の参加者にとっては収益機会が増えるのかもしれません。

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2008年8月11日 (月)

ニューヨークの差押率

Realty Trac.comからニューヨーク州の差押率についてレポートが出ていました。住宅価格下落の影響自体は全米で軽い方だが、日本の投資家の注目も高いと思いちょこっと触れたいと思います。

全米州別、都市圏別の差押率の詳細説明についてはアメリカ・メキシコ不動産投資で有名なGenさんのブログに譲ります。やはり現地の人、タイムリーに良い記事が出てきます。

参考Website: 
http://www.realtytrac.com/ContentManagement/pressrelease.aspx?ChannelID=9&ItemID=5031&accnt=64847

記事のポイント:
- 2008年第2四半期、全米州別で差押率を見るとニューヨーク州は全体で30番目。
- また同期間で全米平均を見ると、171件に1件が差押となっているが、ニューヨーク州は493件に1件の割合となっている。
- ニューヨーク州では2008年第2四半期に16,025件の差押申請があった。
- これは2008年第1四半期と比較して11%増加しており、また前年同期比で見ると62%増加している。
- 全米平均では、2008年第1四半期と比較して第2四半期は14%増加、前年同期比では121%の増加となっている。
- ニューヨーク州は8四半期連続で差押率が上昇している。
- 差押率の高い地域はニューヨーク市とロングアイランド地区で、10つの郡のうちこの2つで約77%を占めている。
- クイーンズ地区とブルックリン地区で約29%、ロングアイランド地区で21%を占めている。
- 約70%の差押申請が現在係争中(差押のファーストステップ)である。
- 係争申請が多いのは、クイーンズ地区、ブロンクス地区、ブルックリン地区、差フォー地区、ナッソー地区、ウェストチェスター地区、スタテンアイランド地区となっている。

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2008年8月 3日 (日)

米国不動産市況

本当に久しぶりの更新です。書けることが少なくてすみません。

Httplareosolutionscomblogwpconten_2729日に5月のS&P・ケース・シラー住宅価格指数が発表された。予想通り、主要10都市圏、及び20都市圏の住宅価格動向を表す指数は大幅に下落し、前年比でそれぞれ、16.9%15.8%のマイナスとなった。S&Pのレポートを見ると、特徴は主に3つあるようだ。

(写真出所:httplareosolutions.comblogwp-contentuploads200805foreclosure.jpg)

1.    マイアミ、タンパ、フェニックス、ラスベガス、サンディエゴ、ロサンゼルスといったサンベルト地帯の下落が大きい。

2.    ボストン、ニューヨークといった北東部の下落が比較的小さい。

3.    デトロイト、クリーブランドが地域経済が足かせとなり大きく下落している。

一方、NCREIF不動産指数を見ると2008年第2四半期(4月~6月)は+0.56%となっている。なんでこんなに違うの?ということになろうが、やはりNCREIFには遅行性がある。物件評価がついてきていないのだ。どういうことかというと、ファンドで運用されているコア型不動産もNCREIFの中には含まれているが、現在ビッドとオファーは離れているが、あまり売買がないので、評価値の中値はあまり下がっていないのだ。もし投売りが頻繁に出れば、ビッドをたたきにいくことになるので、指数全体も下がるであろう。

NAREITの方は既に大幅に下がっており、PBR1倍を割る水準まで来たものもある。流動性があるために投売りにあったのだが、あまりに加速がつきすぎているため、年後半~093月にかけてはもしかして大幅に戻してくるかもしれない。一方、私募不動産は評価が遅れているために、今後も下落するであろう。一部の投資家は上場REITから私募不動産投資に変更しているようだが、今後、上場REITが戻したときに、私募REITが戻らないという可能性も否めない。暫くはリサーチ重視でよいのではないかと思う。

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2008年4月13日 (日)

Key WordはLLC

ヘッジファンドが痛んでいる。特に年明けからの第1四半期のパフォーマンスは過去最低となっている。戦略別で見ると、ある1つのキーワードが浮かび上がってくる。それは「L.L.C」である。L.L.CとはLiquidity(流動性)、Leverage(レバレッジ)、Concentration(集中)を指し、流動性が低く(Liquidity)、レバレッジが高く(Leverage)、戦略特化或いは地域特化しているもの(Concentration)程、そのマイナス幅は大きいようだ。特に、債券裁定取引戦略、クレジット裁定取引戦略、及び地域・戦略特化型(特にアジア特化型)戦略のマイナス幅が大きい。一方、こうした難しい環境下、各ヘッジファンドを見るとキャッシュ比率を高めているファンドが増えている。

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2008年2月22日 (金)

モノライン保険会社が保証する金融商品へのエクスポージャー

本日また金融機関さんにサブプライム関連のエクスポージャーを26日までに提出するようにとの連絡が金融庁から出たようです。9月頃からサブプライム関連エクスポージャーの報告が始まり、第2段階としてサブプライム+CDOのエクスポージャーの提出、第3段階として、1月からサブプライム+CDO+SIV&ABCPの保有比率の提出、そして今日サブプライム+CDO+SIV&ABCP+モノライン保険会社の保証する金融商品へのエクスポージャーの報告が通知されました。以前書いた第4ステージに来たという感じです。

が、いつも急すぎます。単体のシングルヘッジファンドならいざ知らず、ファンド・オブ・ファンズにとってはこの締切(26日)はきついです。以前も書きましたが、提出するのは構わないのですが、急に連絡するのではなく、計画性を持ってやってもらいたいものです。お陰で毎月20日過ぎると憂鬱です。20日ごろって暇になるのでしょうか。

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2008年2月11日 (月)

ステージ4(第2の金融機関+ヘッジファンド危機)

サブプライム住宅ローン問題が長引いていますが、個人的にはいつステージ4が来るのだろうというところに注目しています。(週刊エコノミスト2/12でも特集されています。良い記事だと思います。)

サブプライムローンの延滞率上昇によりローン会社が破綻したのが、ステージ1。サブプライムを再証券化したCDOの格下げによりヘッジファンドとそれに投資していた投資家が痛んだのがステージ2。CDOへ投資するSIV(= Structured Investment Vehicle)の発行するABCPの償還が危ぶまれているのが現在のステージ3。こう見ると、証券化+証券化+証券化プロダクトというのがステージ3というわけです。次に来るのがステージ4。

ステージ4は「モノライン会社の再保険を受けている金融機関の損失処理+現在まだ処理できていないヘッジファンドが保有するCDOが痛むことによるヘッジファンドの損失+それ等のヘッジファンドに投資している投資家の損失」です。

これらを考えると、改めてデュー・ディリジェンスの重要性が分かりますね。今年はあまり流れに逆らわないトレンド・フォロー型CTAへの投資が一番無難かもしれませんね。(←因みに営業トークではございません。)

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2008年2月10日 (日)

ポートフォリオへのCTAの組み込み

ヘッジファンドの1月のパフォーマンスが出始めていますが、単月で見ると過去5年で一番悪いのではないでしょうか。サブプライム住宅ローン問題の影響で8月~9月に信用リスクが急拡大しましたが、10月には大型バイアウト案件がなんとか成立し、スプレッドも収縮に向かっていました。また、ディカップリング論等が台頭し、アジア地域にエクスポージャーをもつマネジャーのパフォーマンスがよく、HF全体ではそれほど大きなマイナスを計上しているところはありませんでした(一部のシステム系ロング&ショートは除く)。

しかし、1月はアジア地域の株式市場が大幅下落し、ロングバイアスのかかっていたロング&ショートマネジャーを中心に大幅なドローダウンとなりました。個別銘柄云々というより、全体的に売られたため、ボトムアップマネジャーが苦戦しました。相場が落ち着いてくれば、レラティブ・バリューでリサーチをきちんと行っているマネジャーのパフォーマンスは回復してくると思います。

そんな中、唯一調子がいいのが、CTAファンド。1月もプラス3%程度は出ているようです。大所は5%以上出ています。その中でも特に投資ホライズンが短期のところが相場の動きに追随し、良いパフォーマンスとなっています。日本の投資家はボラティリティが高いと言いながらよく先物運用を嫌いますが、ポートフォリオに一部組み入れる価値は十分あると思います。日本株のバイ&ホールドでずっと持っている方が余程危険です。

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2008年1月24日 (木)

証券化商品の調査

本日の日経1面にも出ていましたが、金融庁が国内の金融機関を対象に証券化商品の保有額や評価損益等を調べています。これはサブプライム関連商品への投資状況を確認するためですが、これらの調査内容にはヘッジファンド等への投資も調査対象に入っています。これを各金融機関に連絡をしたのが22日。それで24日までにすぐに出せって・・・。

ヘッジファンドの担当窓口は大変。いきなり電話がかかってきて「24日までにはすべて知りたいんですけど・・・」っておい!もう昼過ぎてるよ。急すぎます。特にFoHF形態をとっていると情報収集が大変です。そうでなくともヘッジファンドは情報開示に消極的なのに・・・。

データを出すのが嫌なのではなく、急すぎるのが嫌なのです。お陰で海外のヘッジファンドからはまた日本はやりにくいところとレッテルを貼られてしまいました。思い付きではないのでしょうが、定期的に調査するなど事前にEffective Dateと開示内容、その頻度を開示すべきです。少なくとも国際金融都市東京を目指すのであれば・・・。

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2007年12月 9日 (日)

11月のヘッジファンドパフォーマンス

11月はイベント・ドリブン戦略のパフォーマンスが良くないですね。8月にサブプライム問題が大きくなったおりM&Aのスプレッドが拡大してパフォーマンスが悪化しましたが、9月~10月にかけては、First Data等の案件が無事完了したことから落ち着きを取り戻していました。

しかし、11月にはサーベラスによるユナイテッド・レンタルズ社の買収案件が1億ドルのキャンセルフィーを払って解消されたことが大きな影響を及ぼし、その他の案件でスプレッドが拡大しています。それに伴い、ロング&ショート戦略でも割安株が更に割安となり、苦戦しているようです。

CTAとグローバルマクロ戦略は相変わらず短期のCTA戦略が上手く機能しているようですが、グローバルマクロ戦略で苦戦しているマネジャーがいくつか見られます。

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