最近の金融危機を受け多くの方が解説を加えられています。個人的にはエクイティ・ホルダーのダメージは致し方ないと思いますが、その影響がデット・ホルダーまで及ぶのは避けるべきだったのではないかと思います。詳細はウォールストリート日記さんが上手くまとめられているので、そちらを参考にして頂ければと思います。
ところで最近気になっているのが2つのミスマッチ。1つはファンド・オブ・ヘッジファンズとその投資先ヘッジファンドの間に生じている解約条件のミスマッチ。もう1つは、CDSの損益計上ミスマッチです。
通常ファンド・オブ・ヘッジファンズの解約条件は多少の幅はあれ、1年間のロックアップ、四半期解約、60日~90日前の事前通知です。また投資先ヘッジファンドの解約条件は1年間のロックアップ、月次~四半期解約、30日~90日前の事前通知です。ファンド・オブ・ヘッジファンズはファンドにもよりますが20~60程度のヘッジファンドに投資しています(運用会社や戦略コンセプトにより大きく異なります)。直近5年間でヘッジファンド業界へ多くの資金が流入したため、運用会社によっては自分達の設定するファンド・オブ・ヘッジファンズの解約条件と投資先ヘッジファンドの解約条件が合わないものにまで投資しているケースが見受けられます。
どういうことかというと、ファンド・オブ・ファンズの解約が増えると、運用会社は解約代金を用意するために投資先ファンドを解約しにいかなくてはなりません。しかし、投資先ファンドの現金回収と自分達の設定するファンド・オブ・ファンズの資金化スケジュールが解約条件の観点からマッチしなくなっているケースがあるのです。
ここ5年でヘッジファンド業界は急速に成長したため、ずっと資金流入の状態でした。そのため、多少の解約があったとしても投資家への支払いに困ったことはありませんでした。しかし、この度は多くの投資家が解約に走っているため、12月末の解約ではこの解約条件のミスマッチが浮き彫りになると思います。そうならないために今後いくつかのヘッジファンドは換金売りに走らざるを得ず、そのことが更なるパフォーマンスの悪化へと繋がりそうです。今までよく耐えていたヘッジファンドの中にも苦しくなってくるところが出てくると思います。まさに悪循環です。
もう1つのCDSの損益計上のミスマッチですが、これはAIG等CDSの売り手が犯した大きな間違いです。というかそういった計上を認めていた各国会計制度の間違いでしょうか。CDSの売り手は売った段階でリスクプレミアム(保険料)を買い手からもらいます。しかし、CDSの売り手は、リスクを引き受けているので同期間に貸倒引当金を積む必要があったのですが、実際には破綻して損失が出たあと始めてバランスシートにその損失を計上していました。
これにより、サブプライム問題が出てくるまではCDS市場は堅調に推移し、また取引も急拡大していたため、CDS取引の売り手は、その取引をすればするほどリスクプレミアム分見掛け上の収益が出ていたことになります。利益を計上する期間と損失を計上する期間のミスマッチが起こっていたのです。これについては収益計上のミスマッチをなくすべく当局が共同でデリバティブ取引に関する統一基準を作るべきだと思います。
ヘッジファンドのパフォーマンスは年内は厳しいと思います。業界に身を置くものとしては早く収束して欲しいのですが・・・。
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